2002年1月31日のことだった。
私は衝動的に夜間列車に乗り込んでいた。
東インドのプリという小さな都市を経って、行き先はウェストベンガルの大都市コルカッタ(kolkata)。
およそ12時間の道のりだった。
もう一月以上滞在していたプリの宿に荷物を置いたまま
一晩中3等列車に揺れながら。
コルカッタに行くのはもう4回目だった。
そして今回はただ一人の人に会うためだった。
私は当時、家を出てもう半年くらい旅をしていた。
特別、何かをしていたわけではない。むしろ何もなくても生きていけるんだと思うようになった。
私は将来が見えない18歳だったし、相手は26歳の日本人で医者になろうとする人だった。
(これはごく表面的な事柄に過ぎないが。)
その人ももう1年近く世界のあちこちを旅行していて、国に帰ろうとする少し前に私と会った。
その人と顔を合わせたのはたったの3日間に過ぎない。
時間の長さがさほど重要ではないという言い方も出来るかもしれないが、
後からその人のことを思い起こそうとしても、
素材が少ないため自分が作り上げた幻想にますます執着するようになった。
だから、その人を好きになるというプロセスはほとんど
その人が去っていった後、不在の下で行われた。
インドの3等列車ー予約なしで誰でも入れる席ーは恐ろしく人が多かったりして出来れば乗りたくなかった。
身動きがとれずトイレに行けないという経験もあるのだから。
幸いあの時コルカッタへの夜行列車はそれほど混んでいなかった。
ただまともに横になって寝られる場所がなかったので、座席の上の荷物棚で睡眠をとった。
その時何を考えていたかはっきり覚えている。
「これから会いたい人に会いに行く。私は旅行も長くて、みすぼらしい格好をしているかもしれない・・・でも人の美しさと言うのはそんなことでは決まらない。大事なのはどんな目をしているかだ。そう、目をみれば分かるはず・・・」
それは一種の覚悟のようなもので、私は今まで感じたことのない変な悲壮感さえ覚えた。
コルカッタに着いてからのことについは、友人宛てに書いたメールをそのまま紹介しよう。
9年前のメールが送信箱に残っているのを発見し自分でも少々驚いた。
2002年 2月 1日 金曜日 01時 25分 58秒
・・・・・
昨日、いきなり荷物をまとめて・・海辺の町から12時間離れたコルカッタまで夜行で来ています。
数日前に会った人がまだコルカッタにいるかもしれないと期待しながら。
好きというより、気になる人というか、でも何故ここまでするの?って自分でも思うのです。
もちろん・・お金が切れてコルカッタの銀行に行かなきゃといういいわけもありました。
旅先で好きになった人って、他にも少なくなかったのに
今日はどうしてこんなことになったのかよく分かりません。
今朝コルカッタに着いて(もう4回目です、今回の旅行でコルカッタは・・)
いつも泊まっていた宿に荷物を下ろしてご飯を食べて
別の宿を訪ねていったら
その人が40分前にチェックアウトして空港に行ってしまったことが分かったのです。
そんな!タイに行くとは聞いていたんだけど
どうしてそれが今日なの!!
最後の挨拶の時も、なんてこともなく・・まぁ、いつかまた会えるでしょう、という感じだったのに。
それを知った以上、どうしても会わなければと思って
タクシーを拾ってそのまま空港へと急ぎました。
昨日ある人は、気になることがあればぶつかってみれば?と言ってくれた事もあって、どんな結果になろうが・・
空港に着いたらムスリムの人たちがたくさんいて、武装警官らしき人たちも大勢いてテロ警戒のような殺伐とした雰囲気でした。
訳分からないことに、航空券を持ってないと空港の中に入れないと言われました。
そんな空港があるかと思って抗議したり、友人が中にいるので入れてほしいとも頼んでみましたがダメでした。
通りがかりの日本人の人がいたので、その人にお願いして中にこういう人がいないか見てくださいとまでお願いしたけど
結局会えず。
夜間移動で睡眠不足で・・疲れてもいたし
何であの人のためにここまでするのかと思って、かなり落ち込んで帰ってきました。
これが今日あったことです。まだ整理がつかない。
「今日あなたを空港で探しました。」なんて、メールで話そうとしてもうまく言える気がしません。
・・・・・
私はここで少し忘れていた事実を確認した。
「気になるんだったらとことんぶつかってみたら」と
アドバイスをしてくれた人はプリで知り合った、
私より三つ年上の綺麗な女の子だった。彼女は韓国にいる彼氏と長い国際電話の末、別れた直後であった。
今なら昔の自分に「ぶつかってみるのもいいけど、無理はしなくていいよ」とでも言ってあげたいところだが・・
その時一緒にいた彼女の激しい気持ちの揺れ動きに、少なからず影響されたようにもおもえる。
そしてあの日本人の男の子、コルカッタ空港で知らない人のために快く人を探してくれた・・・
私よりちょっと上の大学生くらいの子で、ずっと忘れていたけど。
心配そうな様子で親切だったことが今も思い出せる。
あとで知人にそのことを話したら、「いいやつじゃないか!むしろあいつと付き合えば」
と言われた事も合わせて思い出す・・笑
3日後プリに戻ってきたわ私は
言い表せない喪失感と熱望に苛まされて、周りは何も変わらず平穏なのに自分の心だけが嵐の真っ只中にいるようだった。
メールでは自分の感じている事をうまく伝えられなかった。
そもそも相手に伝えるべき何かがあるかどうかも疑わしかった。
その人に対する思いよりも
追いかけてみたが「会えなかった」という事件のほうが巨大な意味を持つようになったのだから。
彼宛に書き送ったメールをいまさら開けて見たい気持ちにはならない。
意味不明な英語のメールを送っては、それが生きがいでもあるように返信を待ちに待った。
そして帰ってくる返事は平均的な好意をこめたものだったが、
私には限りなくそっけなく感じられて心を痛めるのだった。
それから、2002年の四月。
彼が旅行の最後に韓国を経て日本に帰ると言う便りをもらい
私は帰国を決心した。
西海岸のゴア(Goa)から空港のある都市まで3日かけて列車に乗り継いで。さらにシンガポールへ飛んで一泊してソウルに戻るという長い帰路だった。
しかしこの時も1日ばかりタイミングがずれて彼に会うことは出来なかった。
そして今日まで2度と会うことはなかったのである。
9ヶ月ぶりにソウルに帰ってみたら、インドの強烈な色彩になれた私の目にはなにもかも今までとは違う色に映るのだった。私にとってソウルは見慣れているが永遠になじめない場所となってしまった。この都市で、幻想の中で思い描いていた彼と会えるなんて到底現実味のないものではあった。
Dec 16, 2010
Dec 15, 2010
ひとつ言えるのは
愛というのはもともと自分の中にあるもので
それが何らかのきっかけによって外へ向かうということだ。
だからその気持ちが何処に向かおうがおかしいことはないと
今は思うけれども
初めて人を好きになったと気づいたときはそれがなかなか認められなかった。
どうして?
人を好きになるのか?
その人でなければいけないのか?
なんの正当な理由も見当たらない。
そして気持ちが冷めたら何もかもくだらなくなって
自分は馬鹿だったと思うのだった。
好きだと思う相手にはいくらでもやさしくなれるし、でなければ冷酷にもなれる。
いまでも、誰かが特別だと感じたときに勇気を出せないのは確かだ。
それが何らかのきっかけによって外へ向かうということだ。
だからその気持ちが何処に向かおうがおかしいことはないと
今は思うけれども
初めて人を好きになったと気づいたときはそれがなかなか認められなかった。
どうして?
人を好きになるのか?
その人でなければいけないのか?
なんの正当な理由も見当たらない。
そして気持ちが冷めたら何もかもくだらなくなって
自分は馬鹿だったと思うのだった。
好きだと思う相手にはいくらでもやさしくなれるし、でなければ冷酷にもなれる。
いまでも、誰かが特別だと感じたときに勇気を出せないのは確かだ。
Oct 6, 2010
予告編
しばらくブログを書いてないので
次は何か面白い話でも書こうと思っていました。
ということで、今のところ候補は
1.自分の初恋の話。
最近「アデルの恋の物語 L'Histoire d'Adèle H.」という映画を観て思い出した。
何だか甘い感じの邦名になっているけど、幻想を追いかけて自己破滅に至る女性を描いている。
いやいや、それを自分と直接重ね合わせたわけじゃないけど。
確かに、誰かに会いたいと思うだけで人は海を渡れる。
もう9年前になる。でもいまだに恥ずかしくて人に語れるような話ではない。
だからこそ少し冷静になって我を振り返ってみるのもいいのでは??
2.ベトナムで詐欺にあった話
これは今年の2月のことですね。
これもまた恥ずかしい話であの時自分が愚かだったなぁとつくづく思う。
ギャンブルと大金を目の前に突きつけられた詐欺劇。
あまりにも突然だったもんで気を付けようがありませんでした。
ただ、知らない人にはついて行かないようにしましょう。特に海外では。
さぁ、次回をお楽しみに。
次は何か面白い話でも書こうと思っていました。
ということで、今のところ候補は
1.自分の初恋の話。
最近「アデルの恋の物語 L'Histoire d'Adèle H.」という映画を観て思い出した。
何だか甘い感じの邦名になっているけど、幻想を追いかけて自己破滅に至る女性を描いている。
いやいや、それを自分と直接重ね合わせたわけじゃないけど。
確かに、誰かに会いたいと思うだけで人は海を渡れる。
もう9年前になる。でもいまだに恥ずかしくて人に語れるような話ではない。
だからこそ少し冷静になって我を振り返ってみるのもいいのでは??
2.ベトナムで詐欺にあった話
これは今年の2月のことですね。
これもまた恥ずかしい話であの時自分が愚かだったなぁとつくづく思う。
ギャンブルと大金を目の前に突きつけられた詐欺劇。
あまりにも突然だったもんで気を付けようがありませんでした。
ただ、知らない人にはついて行かないようにしましょう。特に海外では。
さぁ、次回をお楽しみに。
Aug 20, 2010
母と。
大事な話をしたので記録する。
何気なくだったけど・・
ある日、電話で私は以下のような愚痴っぽいことをこぼした。
ママ、来年個展が決まってね、後1年もないの。来年の7月なの。
このまま大学院に行ったら環境も(いい意味でも悪い意味でもね)変わらないし、学費は高いし。
学校いきながら今みたいにバイトしてて、そうなると実は制作する時間がそんなにないわけ。
3月に卒業したら、ほかの事しないで7月まで絵を描きたいんだけど・・・・?
母は間髪居れず答えてくれた。
じゃあ、卒業したら好きなようにしなさい。今までの生活は煩わしかったし、苦労もしたから。
これからはなにも心配することないよ。
すごいっ。そんなこといってくれるんだ!
うちの母親だけど、すごい。
卒業したら働かない、お金の事もなにも心配しないで制作だけしましょうと
この場合、誰かの援助を得ながらじゃないと生きていけないので
それを支えてくれるといっているのはたまたま自分の母親だったのだ。。
私は家族であれ、人に頼ることに抵抗があった。
大学に入って、親に学費を出してもらうことすら
自分では納得いかなかった。
二十歳過ぎた時点ですべて自分でやろう、もう親からはなにももらわないと思いつめていた。
でも今回は少し違う気がした。
親ではなく、一対一の人間として、理解者を得たような。 私がやろうとしていることを信じて、支えてくれると言っている人に出会えた。
もし私が10年、30年経ってもペインターかそれに似たような仕事をしていたら、母のお陰なんだろう。
とにかくもうバイトをやっていられない気持ちも強い。
作品の数がぜんぜん足りないから。
施設の夜勤に一回入ると、二日はつぶれてしまう。体調もおかしくなる。
それを腹立たしくおもいながら、寝ないでアトリエに向かうこともある。
でも寝ないと人間、いい仕事が出来ない。
プロになりたいならもっと仕事をしなきゃ。
単純にいうと制作時間をもっと確保しなければ。
母はそういうことを誰よりも分かってくれている気がする。
私ってラッキーなんだね。
何気なくだったけど・・
ある日、電話で私は以下のような愚痴っぽいことをこぼした。
ママ、来年個展が決まってね、後1年もないの。来年の7月なの。
このまま大学院に行ったら環境も(いい意味でも悪い意味でもね)変わらないし、学費は高いし。
学校いきながら今みたいにバイトしてて、そうなると実は制作する時間がそんなにないわけ。
3月に卒業したら、ほかの事しないで7月まで絵を描きたいんだけど・・・・?
母は間髪居れず答えてくれた。
じゃあ、卒業したら好きなようにしなさい。今までの生活は煩わしかったし、苦労もしたから。
これからはなにも心配することないよ。
すごいっ。そんなこといってくれるんだ!
うちの母親だけど、すごい。
卒業したら働かない、お金の事もなにも心配しないで制作だけしましょうと
この場合、誰かの援助を得ながらじゃないと生きていけないので
それを支えてくれるといっているのはたまたま自分の母親だったのだ。。
私は家族であれ、人に頼ることに抵抗があった。
大学に入って、親に学費を出してもらうことすら
自分では納得いかなかった。
二十歳過ぎた時点ですべて自分でやろう、もう親からはなにももらわないと思いつめていた。
でも今回は少し違う気がした。
親ではなく、一対一の人間として、理解者を得たような。 私がやろうとしていることを信じて、支えてくれると言っている人に出会えた。
もし私が10年、30年経ってもペインターかそれに似たような仕事をしていたら、母のお陰なんだろう。
とにかくもうバイトをやっていられない気持ちも強い。
作品の数がぜんぜん足りないから。
施設の夜勤に一回入ると、二日はつぶれてしまう。体調もおかしくなる。
それを腹立たしくおもいながら、寝ないでアトリエに向かうこともある。
でも寝ないと人間、いい仕事が出来ない。
プロになりたいならもっと仕事をしなきゃ。
単純にいうと制作時間をもっと確保しなければ。
母はそういうことを誰よりも分かってくれている気がする。
私ってラッキーなんだね。
今年中にやりたいこと
もう八月だし、今年がすぐ終わっちゃいそうな気分になってる。来年卒業だからかな?
今年中やりたいこと!
思い出したら更新しよう^^
シューマンのピアノ協奏曲を生で聴きたい。今年はシューマンの年でもあるし。
モーツァルトのオペラを観に行きたい。行けなかったら来年。
引越し。 早ければ年末・・ 駅に近いほうに引っ越したい。
昨日友だちの家に見に行った。その子はもうすぐ国に帰るので部屋を私に明け渡してくれるとの事だった。
ジャン・クリストフを最後まで読む。これ長くて・・日本語だとめんどくさいけど。語彙は増えるかも。
バイトを減らす。 二つを掛け持ってて、どっちも夜勤。睡眠不足は体に悪い。
片方は今年中にやめる。 忘れないように書いとく!
ジョギングを続ける。何事も持続だね。
(明日またベトナムに行く。ホーチミン市内を走るのはちょっと想像つかないなぁ。あんなバイクでガサガサしているところなんで・・笑 )
あいちトリエンナーレ、行きたい。
ホテルと高速バスを調べてすぐにでも行く気になっていた。でも9月には無理そうなので、10月に。
今年中やりたいこと!
思い出したら更新しよう^^
シューマンのピアノ協奏曲を生で聴きたい。今年はシューマンの年でもあるし。
モーツァルトのオペラを観に行きたい。行けなかったら来年。
引越し。 早ければ年末・・ 駅に近いほうに引っ越したい。
昨日友だちの家に見に行った。その子はもうすぐ国に帰るので部屋を私に明け渡してくれるとの事だった。
ジャン・クリストフを最後まで読む。これ長くて・・日本語だとめんどくさいけど。語彙は増えるかも。
バイトを減らす。 二つを掛け持ってて、どっちも夜勤。睡眠不足は体に悪い。
片方は今年中にやめる。 忘れないように書いとく!
ジョギングを続ける。何事も持続だね。
(明日またベトナムに行く。ホーチミン市内を走るのはちょっと想像つかないなぁ。あんなバイクでガサガサしているところなんで・・笑 )
あいちトリエンナーレ、行きたい。
ホテルと高速バスを調べてすぐにでも行く気になっていた。でも9月には無理そうなので、10月に。
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